第44話 勇士 | ホークスを世界一に! 孫正義の21世紀革命2005

第44話 勇士


第44話


勇 士






 8月16日(火)。斉藤は開幕から13連勝。松中が初回に先制の39号。

松中は言った。「エースが投げて、負けるわけにはいきませんから」。城島に代わって必死に戦っている的場。松中・斉藤・的場、3人の勇士は優勝の決意を述べた。




 宮内謙(ヤフーBB副社長)は1984年にソフトバンク入社以来、20年以上、孫正義を支えてきた側近だ。事業家としての孫を熟知している。

「孫社長は、いつも事業を立ち上げた瞬間には次に移る。そこが普通の人と違うところ。常人は事業がうまくいきだすとスティック(固執)するんだよね。おれがやったんだ、おれがやったんだで、その事業に埋没する」。

常人の眼には孫は飽きっぽく、短期間で事業に興味をなくしてしまうように思えるときがある。しかし、孫の事業に対する考えは創業以来一貫している。宮内は言う。

「この人には負ける。やっぱり他にはいないと思う。つねに夢をもっていて、負けそうになってもヘコたれない。そういう人なの。ぼくにはとうてい真似ができない」

 絶対不利は絶対有利に通じる。

「孫社長はそれができる。ぎりぎりの瀬戸際のときに、力を発揮できる希有な人物なのです」。

 孫の交渉力、営業、セールス能力のすごさを宮内はつぶさに見てきたのである。20歳で自動翻訳機を売ったときと同じ。あの凄まじいエネルギーはどこから来るのか。宮内は言う。

「孫社長は相手の地位がどうだとか、そういう見方はしない。そこが凄い。企業は技術と営業とオペレーションで成り立っている。そこのところをよくわかっている」

 たとえヤフーBBの技術がすばらしいといっても、売れなければ話にならない。宮内は言う。

「ときには若い32、33歳の社長にも頭を下げることができる人なのです。そして、若い人とも意気投合できる、柔軟な心をもったエネルギーにあふれている。既成概念がまったくない人なんです」

 買収も意気投合しなければ成立しない。

 次々に新しいテクノロジーが生まれてくる。その技術を導入しようとすると既存の勢力から強烈な抵抗にあう。

「人間も企業もそう。血みどろの戦いをしている。ずっと死ぬまで戦うんです。そのプロセスがおもしろい」

 宮内は断言する。

「リーダー孫正義は、世界に冠たる勇士だ」

                 (文中敬称略)