第48話 武士道 | ホークスを世界一に! 孫正義の21世紀革命2005

第48話 武士道

第48話

武士道

 8月30日(火)。ロッテとの首位攻防戦。和田と久保の同級生対決でもある。2回、城島のシングル、宮地の2塁打。まず1点を先制したが、6回にロッテ、サブローのソロで同点に。その裏、ホークスは3点、7回に2点を追加して、ふたたび6対1とリードした。「楽勝のケース」(王監督)。だが、8回にロッテは一挙に6点をあげ、逆転した。

その裏ホークスは、代打大道の今季初安打のタイムリーヒットで同点に。9回、先頭の川崎が3塁打。最後は松中のサヨナラ打。川崎は今季最多の1試合4安打。「(接戦に持ち込まれたのは)ぼくたちにスキがあったからだと思う。もっと気を引き締めていかなければいけない」(松中)。前半は投手戦。後半は乱打戦。私たちは1試合で2つの楽しみを味わうことができてよかったが、疲れた。「この時期、投手はしんどい」(王監督)。2位ロッテとの差は4に。夏バテにご用心。

 8月31日(水)。夏休み最後の試合。ヤフードームに詰め掛けた多くのファンとともに、我々は歴史の目撃者となった。斉藤は開幕15連勝。日本記録タイで勝利投手となったのだ。この日、斉藤はあまり調子がよくなかったが、気迫のこもったピッチングを見せた。「チームが勝つことだけに集中して投げたい」。「万馬券だな」王監督が笑いながら言う伏兵・鳥越とカブレラの活躍で勝利を掴んだ。この日、レギュラーシーズン1位のマジック15が点灯した。

 孫は、これまでの枠を超えたスケールで物を考える。「大きな数字、大きな夢を語ると、男は黙って実行すべきだ、あまり多くを語ると笑われる、軽々しすぎるというように、特に日本的文化、風土の中では批判される場合が多い」。

 壮大な夢を語る孫に対して、いわゆる「孫バッシング」など厳しい反対意見が多かった。これには300年のあいだ、江戸幕府によって培われた武士道の影響が大きいと孫は考えている。

 だが、男は黙って戦うのみでいいのか。「生まれたからには人生を思いっきり生きたい。夢に向かって突き進む」と孫は言うのだ。

 31日の8回表、ロッテの橋本の打球が斉藤の左太ももを直撃、斉藤は転倒したが、1塁に送球、アウト。斉藤は激痛のためしばらく起き上がれないほどだった。冷却スプレーをしてふたたびマウンドに立った。試合後、足を引きずりながらお立ち台にのぼった斉藤は言った。「痛みはありますが、大丈夫です。ここまで来たら投げますよ」。

               (文中敬称略)