第52話 美酒
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第52話
美 酒
9月27日(火)。ヤフードームに戻ってきたホークスは元気を取り戻した。サムライ・ズレータの2本目のホームラン。和田は12勝目をあげた。
9月28日(水)。松中が46号。3年連続120打点は日本プロ野球史上初。「(王)監督のひとつ上をいけたのですごく嬉しい」(松中)。アメリカから愛妻が来ているズレータも43号ホームラン。
3連勝。今季、監督の背番号と同じ89勝。ソフトバンク元年、王ホークスのパ・リーグ1位が決定した。3年連続のレギュラーシーズン1位だ。
投打のタイトルを数多く獲得した。最多本塁打。松中46。最多打点松中121。ズレータはそれぞれ43と99と2位の活躍を見せた。松中は最多出塁率にも輝いた。「4番の仕事」をしっかり果たして堂々の2冠だ。2部門とも昨年の成績を上回ってのタイトル獲得である。「飛ばないボールになったからといって成績が落ちるのは、選手として恥ずかしい。筋力トレーニングはまちがっていなかった」(松中)。
最多勝利賞は杉内の18勝。最優秀防御率2・11.「これだけ勝てるとは思ってもいなかった」。(杉内)。リズムのいい投球で気分爽快だった。
最優秀投手(勝率1位).941。斉藤の気迫のこもった投球。「負けないのは気持ちがいい」(斉藤)。1か月、故障で出遅れたがそれを補うに充分な活躍だった。杉内は勝利率2位(.818)。
試合後のセレモニーで王監督は挨拶をした。
「今年の選手はほんとうにすばらしい野球をしてくれました。監督として
指揮しながら、何度感激し、胸を詰まらせたかわかりません」。
我々ファンも同じ想いだった。
松中が松坂から打った1試合3本のホームラン。
神宮球場でわが母校の大学の後輩・和田の力投に「早慶戦」の熱い感動が蘇ってきた。
ルーキー・正太郎の逆転の一打。そして「まさかのロッテ3連敗」の危機を救ってくれたルーキー高橋秀の力投。感動の波が次から次に押し寄せてくる。美酒に酔いたい。
だが、まだそのときではないのだ。
「優勝を目標にしてきたので、いまはオフのことで頭がいっぱい」。(松中)
10月3日(月)。王監督は孫オーナーと会食した。ちょっぴりワインも飲んだ。「リーグ1位の報告とプレーオフと日本シリーズの決意表明をした」(王監督)。
孫は言う。
「私はチャレンジし続けること自体が非常に幸せな人生だと思っています。つねに新しいことをめざしているからです」。
2年ぶりの日本一奪還に向けて、ほんとうの戦いがいま始まる。
(文中敬称略)