ホークスを世界一に! 孫正義の21世紀革命2005 -6ページ目
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第4話 実るほど頭をたれる稲穂

こんにちは。編集の岩野です。

4月1日は各社で入社式がありましたが、

新聞やテレビが真っ先に報じていたのは、ソフトバンク・グループの入社式でした。

その報道でとても印象的だったのは、孫社長がキーワードに『志』(こころざし)という

言葉を使っていたことです。

『志高く』――この言葉のもつ大きな意味に気づいた人には、

孫社長の思い描く未来が見えるはずです。

そして、その意味するところをわれわれにもっとも的確に伝えてくれるのが、

このブログの著者である井上篤夫氏にほかなりません。

 

 

 

 

 

第4話

 

実るほど頭をたれる稲穂

  

 

 

4月1日、ソフトバンク・グループの入社式で孫は新入社員2千187名に言葉を贈った。

「最近はホリエモンさん(ライブドア・堀江社長)のおかげで、大人のソフトバンクと言われるようになった」

会場からは笑いがもれた。冒頭、孫はいつもの穏やかな口調で新入社員の緊張を和らげた。

 

 

「これからも新しいことにチャレンジしていかなければならない」

 人類はこれまで農業革命、工業革命を経て、現在は第三の革命――デジタル情報革命の時代にいる。「世界中の情報を一瞬にして知ることができ、人類の英知として蓄えられてきた知識を一瞬にして検索し、人々に伝えることができる」

 これは人類の力をはるかに大きくしてくれる。

「(この革命で)世界中の人々が平等に楽しいことや、幸せを分かち合うことができます」

 まもなく、この新しい時代がやってくる。

「電話、テレビ、パソコン、携帯などすべてを包括するブロードバンドの時代がやってくる。ありとあらゆるもの、知恵と知識を分かちあえる」

 ソフトバンク・グループはブロードバンド・インフラを提供し、その上のさまざまなサービス、コンテンツを提供する会社へと成長していく。そのために大事なことは社員一人ひとりが同じ志を共有していることだ。

「デジタル情報革命を起こす。そのテクノロジーを使って新しい21世紀のライフスタイルをもつことができる。その大きな志をもつ」

 しかし、大きな志も小さな日々の一歩から。

 

 

 

 グレーのネクタイ、落ち着いた色調のスーツの孫は会場の一人ひとりの社員に話しかける。

「みなさんは各職場で、夢と現実のギャップに苦しむことがあるかもしれません。大きな志を持ち続けて、この程度の悩みや問題は当然、解決しなければならないと取り組んでください」

 孫もこれまで何万という問題を解決してきた。

「すべての問題は我々を鍛えてくれる“宝”と考えて克服していってほしい。真正面から明るく目をそらさずに解決してください。問題を乗り越えて大きな自分になっていただきたいと思います」

 孫は締めくくった。

「人生は一歩一歩、志はでっかく、志高く」そしてグループの総帥孫は、新入社員に頭を下げたのだ。「一緒にがんばりましょう。同じ志とともに。よろしくお願いいたします」

                (文中敬称略)

第3話 成功のカギ

福岡ドーム

ラッキーセブンの応援風景

 

 

 

 

 

第3話

成功のカギ

 

 

 

 

3月30日、ソフトバンクBBは、総務省を相手取って起こしていた、携帯電話の800メガヘルツ帯割り当てに関する行政訴訟を、29日付で取り下げたことを明らかにした。

 2月に総務省が「新規参入者に800メガヘルツ帯を割り当てない」方針を決定したので、訴訟を継続することは無意味と判断したためだ。

 では、ソフトバンクの携帯事業はどうなるのか。

「やると決めた以上は絶対にやる」。孫が貫いてきた信念である。 これまでも難題に直面してきた。孫はどう考え行動したか。

 

 

  

「できあがったものを守ればいいというのでは、時代の波に流されてしまう。いろんな意味で攻めていかなければならない」

 攻めるということはどういうことか。

「かなり難しい局面でも、クリエイティブに打開していかなければならない。そのためには脳ミソがちぎれるほど考える」

 しかし、妙案はなかなか出てこない。孫は言う。

「ほんとうに心底、ちぎれるほど考えてみよ、そうするとおのずと新しいひらめきなり、問題解決策が出てくる」

 孫は難問から逃げることは決してしない。

「私は問題を忘れるために酒を飲むとかゴルフをやるとかしない。問題をとことん考え抜いて、考え抜いて、解決策を見出して実行に移す。そうするとモヤモヤがとれてスカッと晴れるわけです。問題から逃げてはいけない」

 孫は重ねて言う。

「世の中、困難だらけだ。困難なことはたくさんある、しかし不可能なことはそうたくさんない」

 

 

 

 3月30日、福岡ソフトバンクホークスは楽天を8-0で完勝。開幕5連勝。嬉しいことに、バティスタが来日第1号ホームランを打った。

 メジャー通算214本塁打の実績をもつ、バティスタからの「待望」の一発だった。

 それまでは力感のないスイングで、好機でもあっさり凡打を繰り返してきた。ファンも「ほんとうにやってくれるのか」と不安を抱いていた。

 だが、ほんとうに苦しんでいたのはバティスタ本人だった。ナインは口をそろえて言う。

「まじめで、大リーガーのプライドというのではなく、ほんとうに野球が好きでファンに喜んでもらいたいと猛練習を繰り返してきた賜物だ」

 孫は語る。

「失敗の中にこそ成功のカギはある。失敗という偶然を悔やむより、もっといい結果に目を向けよう」

 結果はおのずとついてくる。

(文中敬称略)

 

早くも第2話・孫とスヌーピー

 

 

 

 編集担当の岩野です。こんにちは。

 連日、メディアではライブドアのフジテレビ・ニッポン放送買収と、それにからんだSBI(ソフトバンク・インベストメント)の話題が取り上げられています。 編集部にも、テレビ各局から『志高く』の著者・井上篤夫さんへの出演依頼が殺到していますが、このブログほど的確に情勢を分析しているメディアはないのではないか、と、編集者として実感しています。 井上さんも、こうしたヴィヴィッドな動きに対して、ブログを通じて皆さんにメッセージをお届けしますので、ぜひご注目ください。

 

 では、第2話です。

 

 

 

 

 

第2話

 

 

孫とスヌーピー

 

 

 

 

 3月28日、ホークスは楽天に6-1と快勝した。

  5回、1点を先取されたが、その裏すぐに5安打で4点を奪い、逆転。格のちがいを見せつけた。これで開幕3連勝。馬原が王監督にホークス通算700勝をプレゼントした。今年の馬原はやってくれる。「個人的には2ケタ勝利。1年間1軍に定着し、チームの信頼を得られるようにがんばりたい」と力強く語っている。

  オープン戦、開幕戦、第2戦と湿り勝ちだった打線もようやく「開花」宣言となった。「強運の男」孫がツキを運んでくれたのかもしれない。

 

 

 

 

 酉年(とりどし)の今年、孫は「歳男」である。

  48歳の歳男は「闘鶏」ともいわれる。つねに闘いを挑んでいる。容易に妥協をしない。これまでの人生はけっして平坦であったわけではない。闘病生活や「経営危機」を噂されたこともある。だが、孫は不死鳥のように蘇ってきたのである。

  なぜそれが可能だったのか。人並みはずれた頭脳と不断の努力は当然のこと。

 さらに強運。ツキを呼び込む力。では何がそうさせたのか。

 3月26日朝、福岡入りした孫は、フジテレビとの提携について初めて口を開いた。

「メリットがあり、機運が高まってくれば考えていく」

 だが、孫はフジテレビとの提携だけを示唆しているわけでない。

「フジテレビに限らず、NHKでも、どのテレビでもネットとの融合はさまざまな形でなされる。フジとの協力は是是非非で考えるが、私自身はフジとのことは高く評価している」

 さらに孫はこう述べたのだ。「われわれは敵対的買収の経験がない。望み、望まれる関係がいい」

 

 

 

 

 1996年6月、孫は世界のメディア王という異名をもつ豪のルパート・マードックとテレビ朝日を買収した。だが、「朝日新聞としてはテレビ朝日の株を買い戻したいという気持ちが強かった」ので、買った同額で朝日側に売った。

 テレビ朝日に代わってフジテレビが、マードックと作った衛星局JスカイBに資本参加をしてくれた、そのとき以来、孫はフジテレビの日枝会長と友好関係にある。

「ゴルフをしたりする仲です」孫は言う。「テレビ経営への参画は考えていません」

 デジタル情報革命を推進するという確固たるビジョンを持つ孫に対して、マードックや日枝は絶大な信頼感を持っている。そのうえ人気漫画の愛犬スヌーピーのような愛嬌を合わせ持つ孫には、「ツキ」も味方する。

 ときどき私は、孫の顔とスヌーピーが重なるような気がする。

               (文中敬称略)

 

注目の第1話 「レボリューション・イエロー」

 

第1話

 

 

 

レボリューション・イエロー

 

 

 

 

3月26日、パ・リーグ開幕。孫は「わくわくしながら」この日を迎えていた。

ちょっぴり寝不足だったが、背中にSONのネームが入ったグラウンドコートを着た孫は笑顔で姿を見せた。私は孫に声を掛けた。「いよいよですね」孫は答えた。「ありがとう」。私たちは固い握手を交わした。

球界改革が始まるんだという孫の熱い気持ちが伝わってきた。

勝ってもらいたいですね。そして選手のみなさんには1年間怪我のないようにして活躍していただきたい」

福岡県西方沖地震で被災した方々を勇気づけたい。「日本一奪還」そして「世界一をめざす」ファンの声援に応えるためにも勝ちたい。

 

 

 

試合は和田の好投にもかかわらず、7回に1点を先取された。だが、その裏、柴原が逆転3ランを左翼席に打った。オーナーズ・ルームで観戦していた孫も、ジェット風船を飛ばして喜んだ。

9回表、勝利目前になった孫は、グラウンドに降りた。私は孫に声を掛けた。「おめでとうございます」孫は笑顔で言った。「まだまだ試合はわからない」。満塁で日本ハム新庄。結果は三振。

王監督が孫に歩み寄ってウイニングボールを手渡した。孫の手元には、先発の和田がこの日投じた1球目のボールがあった。

「一生の記念です。本当に嬉しい」

孫はボールを高々と掲げた。ヤフードームの観客席からは割れんばかりの声援があがり、黄色いジェット風船が飛び交った。

「孫オーナー、ありがとう。ありがとう」スタンドからの声に孫は会釈で応えた。ファンの嬉しい気持ちが孫に痛いほど伝わってくるのだ。

孫は1塁側ベンチでナインとハイタッチを交わした。柴原のヒーローインタビューを見守る孫の胸に去来するものは何だったのか。リニューアルされた応援歌『いざゆけ若鷹軍団』が場内に流れると、孫も右手を振り上げて大きな声で歌った。ドームに勝利の花火があがった。

「最高です。ドキドキしながら観てました。こんなに興奮しながら野球を見たのは初めてです」

 場内は黄色いジェット風船が飛び交い、黄色一色に染まった。孫は興奮ぎみに言った。「黄色ってこんなきれいな色だったんだ……」

 

 

 

 孫は尊敬する幕末の志士、坂本龍馬の「大きな志」を継いで、デジタル情報革命を推進している。その象徴として黄色を「レボリューション・イエロー(改革の黄色)」に選んだ。「志はでっかく、一歩一歩がんばります」。この日、「世界一」への大きな第一歩が始まった。

                  (文中敬称略)

 

 

「ホークスを世界一に! 孫正義の21世紀革命2005」いよいよスタート!

みなさん、はじめまして。
私は編集者の岩野裕一と申します。

ベストセラー『志高く 孫正義正伝』(実業之日本社刊)の著者で、ソフトバンクグループの総帥・孫正義氏をもっともよく知る作家、井上篤夫氏が、ブログ上での新連載「ホークスを世界一に! 孫正義の21世紀革命2005」をスタートします。
この連載は、『志高く』のいわば続編にあたるもので、ソフトバンクのホークス球団買収後、「スポーツニッポン」西部本社版(九州・中国地区で発行)で
井上氏が連載していた同名の人気コラムを、ブログの場に移して続けていきます。
井上氏と孫社長の親交は20年近くにも及び、その取材の濃さは他のジャーナリストの追随を許しません。
福岡ソフトバンクホークスファンの皆さんはもちろんのこと、いま日本でもっとも注目を浴びている事業家・孫正義社長の動向やビジョンに興味のある方は必読! のコラムです。

毎週3回、月・水・金に更新する予定ですので、ぜひご愛読ください。
また、リンクやトラックバックも歓迎しますので、どうかよろしくお願いいたします!



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