ホークスを世界一に! 孫正義の21世紀革命2005
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第52話 美酒



 このブロクを中心に、孫社長とホークスの1年をまとめた井上篤夫著『孫正義 世界一をめざせ!』(実業之日本社刊)が、いよいよ明日発売になります。

 10月11日(火)午後6時から、紀伊國屋書店福岡本店でサイン会も開催しますので、ぜひご来場ください!

10月7日発売!

52

美 酒

 9月27日(火)。ヤフードームに戻ってきたホークスは元気を取り戻した。サムライ・ズレータの2本目のホームラン。和田は12勝目をあげた。

 9月28日(水)。松中が46号。3年連続120打点は日本プロ野球史上初。「(王)監督のひとつ上をいけたのですごく嬉しい」(松中)。アメリカから愛妻が来ているズレータも43号ホームラン。

 3連勝。今季、監督の背番号と同じ89勝。ソフトバンク元年、王ホークスのパ・リーグ1位が決定した。3年連続のレギュラーシーズン1位だ。

 投打のタイトルを数多く獲得した。最多本塁打。松中46。最多打点松中121。ズレータはそれぞれ43と99と2位の活躍を見せた。松中は最多出塁率にも輝いた。「4番の仕事」をしっかり果たして堂々の2冠だ。2部門とも昨年の成績を上回ってのタイトル獲得である。「飛ばないボールになったからといって成績が落ちるのは、選手として恥ずかしい。筋力トレーニングはまちがっていなかった」(松中)。

 最多勝利賞は杉内の18勝。最優秀防御率2・11.「これだけ勝てるとは思ってもいなかった」。(杉内)。リズムのいい投球で気分爽快だった。

 最優秀投手(勝率1位).941斉藤の気迫のこもった投球。「負けないのは気持ちがいい」(斉藤)。1か月、故障で出遅れたがそれを補うに充分な活躍だった。杉内は勝利率2位(.818)。

 試合後のセレモニーで王監督は挨拶をした。

「今年の選手はほんとうにすばらしい野球をしてくれました。監督として

指揮しながら、何度感激し、胸を詰まらせたかわかりません」。

 我々ファンも同じ想いだった。

 松中が松坂から打った1試合3本のホームラン。

神宮球場でわが母校の大学の後輩・和田の力投に「早慶戦」の熱い感動が蘇ってきた。

 ルーキー・正太郎の逆転の一打。そして「まさかのロッテ3連敗」の危機を救ってくれたルーキー高橋秀の力投。感動の波が次から次に押し寄せてくる。美酒に酔いたい。

 だが、まだそのときではないのだ。

「優勝を目標にしてきたので、いまはオフのことで頭がいっぱい」。(松中)

 10月3日(月)。王監督は孫オーナーと会食した。ちょっぴりワインも飲んだ。「リーグ1位の報告とプレーオフと日本シリーズの決意表明をした」(王監督)。

 孫は言う。

「私はチャレンジし続けること自体が非常に幸せな人生だと思っています。つねに新しいことをめざしているからです」。

 2年ぶりの日本一奪還に向けて、ほんとうの戦いがいま始まる。

(文中敬称略)


第51話 二合目

10月7日発売!

『孫正義 世界一をめざせ!』実業之日本社より10月7日発売!

定価 税込1050円、カラー口絵つき

編集担当の岩野です。

ホークスのパ・リーグ第1位、改めておめでとうございます!

このブロクは第50話までが単行本になりますが、

ブロクはまだまだ続きます。

引き続き、ご愛読ください。






第51話 



2合目







 9月13日(火)。日本ハム戦。延長10回、バティスタがサヨナラ打。「さすがメジャーだ」(王監督)。ズレータが先発復帰。役者が揃った。

 9月14日(水)。和田が8月3日から42日ぶりの勝利で、11勝目。ズレータ38号ホームラン、三冠王も視野に。

 9月17日(土)。9連戦の緒戦、オリックスにサヨナラ負けを喫する。杉内の好投が報われず。

 9月18日(日)。サンデー新垣が登板。149球で今季2度目の完封、9勝目。1対0。「必殺仕事人」大道の決勝犠打。ベテランの存在は大きい。ロッテとの4連戦に向けての弾みがついた。

 9月19日(月)。5点差をつけてリードしたが、5回に同点に追いつかれ逆転負け。城島の2打席連続ホームランが水泡に。この日、ダイエーの創業者中内こう氏死去。合掌。

 9月20日(火)。松中が2打席連続ホームランしたが、またしてもロッテに敗れる。「中内氏の弔い合戦」(王監督)のはずだった。2連敗。

 9月21日(水)。ロッテに大敗して3連敗。ついにゲーム差は2に。

 9月22日(木)。ホークスの危機を救ったのは「秘密兵器」ルーキー・高橋秀の力投だった。6回途中まで1失点で初勝利をあげた。

 9月23日(金)。松中44号、川崎4号、ズレータ40号、大道1号のホームラン攻勢で、西武との初戦に勝利した。杉内はハーラートップの18勝をあげる。

 9月24日(土)。まさかの9回裏逆転負け。だが、ロッテが楽天に敗れたため1位が確定した。「コメントする気分になれん」と王監督は怒り心頭だった。

 孫は素直に喜びのコメントを出した。

「見事、レギュラーシーズンを制したことはこの上ない喜びです。次はプレーオフ。リーグチャンピオンシップのフラッグを手に、日本シリーズで日本一に。そして11月に行われるアジアシリーズでアジアナンバーワンになり、世界一の夢に一歩一歩近づいていきたいと思います」

 9月25日(日)。斉藤和巳と松坂のエース対決。松中が4回、45号2ラン。斉藤は力投をしたが、9回2アウトとなったところで降板。馬原が前夜の逆転負けの嫌なムードを打ち消した。長く苦しい9連戦を戦い抜いたホークス。レギュラーシーズン単独1位が確定した。


 20代から事業をはじめ、ビジネスでも「世界一の夢」に一直線に進む孫。いま、富士山の登攀にたとえればどのくらいまで来ているのだろうか。孫は答えた。

「まだ2合目です」

(文中敬称略)



このブログが本になります! 福岡でサイン会も!

10月7日発売! 編集担当より読者の皆さまへ!


いつも、本ブログをご愛読いただきましてありがとうございます。

まずは、ホークスのパ・リーグ1位決定を祝いたいと思います。

いよいよプレーオフ、そして念願の日本一に向けて、がんばってほしいですね。


そして、こちらも嬉しいお知らせです。

このブロクと、本年春のスポーツニッポンの連載に大幅加筆した単行本、『孫正義 世界一をめざせ!』が、きたる10月7日、全国の書店で一斉に発売されます。出版社は実業之日本社、定価は税込み1050円です。

巻頭には、王監督やホークスの主力選手、そして孫さんのアメリカ留学時代など、カラー口絵も8ページついています。ぜひお求めください。


また、本書の刊行を記念して、10月11日(火)午後6時から、紀伊國屋書店福岡本店(JR博多駅前)で、著者・井上篤夫氏の「サイン会」を行います。

福岡の方も遠方の方も、ぜひお待ちしております!

第50話 日本

第50話


日 本







 9月9日(金)。日本プロ野球組織(NPB)は来年3月開催予定の国別対抗戦(ワールド・べースボール・クラシック=WBC)の日本代表監督に、王監督を最有力候補として調整を進めている。

 9月10日(土)。楽天戦。松中は4打点の活躍、杉内が粘りの投球を見せた。杉内はリーグトップタイの17勝目。ホークスは80勝、一番乗り。

 9月11日(日)。ホークスは楽天の新人一場から4点を先制したが、その裏、新垣は3点を奪われ、1点差に。6回には同点に追いつかれた。7回、城島の3ランで勝ち越しに成功。新垣から佐藤、三瀬と継投、最後は守護神、馬原が締めくくった。楽天に連勝。プレーオフ、日本一奪還への大きな弾みをつけた。



 

 この日、第44回衆議院議員選挙が行われた。

「私の一番好きな日本人は坂本龍馬です。官位もいらない、金もいらない。名誉もいらない。でも、自分の命を天下国家に捧げる――ほんとうに清い人生を送ったと思います」

 龍馬に限らず、当時の幕末の日本人、特に男は命を賭けて命を捧げて、天下国家のために動いた。何かと闘うとき、動かそうとするとき、相手は弱点をついてくると孫は言う。

「最後のぎりぎりのところで、金もいらない、地位もいらない、命もいらないという迫力でかかってくる男ほど敵からみて手こずるものはない。(政治家なら)有権者も、あるいは反対側にいる人もいつかは(心を)動かされる」

 私は孫が否定的な言葉を吐いたり、名指しで相手を批判するの聞いたことがない。孫は言う。

「日本が悪い、誰かが悪いと言い出したら、もうそれで終わってしまいます。俺が変えてみせる、ひとりでも変えてみせる――せめて自分の業界ではそういうつもりでやっている」

 孫は固い決意で言う。

「けっしてできないことはない。たったひとりでも革命はできる。いまの日本でもできる、いまの政治でもできると思っています」 




 私は孫のこの言葉が好きだ。

「世の中、困難だらけだ。困難なことはたくさんある。しかし、不可能なことはそうたくさんない」

 明日に繋がる、いま。

 孫の「世界一!」への戦いは続く。

(文中敬称略)


 

第48話 簡単な問題

第49話

簡単な問題


 9月3日(土)。杉内は西武・西口と最多勝対決に挑んだが、手痛い2発を浴びた。打線の援護もなく17勝を逃した。「玉が高く浮いてしまった」(杉内)。

 9月4日(日)。サンデー新垣が好投。高速スライダーが復活した。4安打、新垣は自己最多タイの14K。「できれば寝ないでこのピッチングを覚えておいてほしい」(王監督)。「奪三振王」新垣が復活した。復調7勝目、今年いちばんの内容だった。

 9月5日(月)。ソフトバンクは総務省に携帯事業サービス新規参入を申請した。参入を計画する他の事業者に先駆けて第1号の申請。早ければ、2006年秋のサービス開始をめざす。

 28年前のこの日、読売巨人軍の王貞治が国民栄誉第1号を受賞している。

王選手は756本の本塁打世界最高記録を樹立したのだ。

 9月6日(火)。オリックス戦。和田が好投したが逆転負け。

 9月7日(水)。斉藤、16連勝のかかった試合だったが、オリックスに連敗。

「もうちょっと何試合かは我慢だな」(王監督)。

 ズレータが欠場、城島は肩の痛みが完治せず、苦しい戦いを強いられている。

 孫は言う。

「われわれは足りない人材、足りないお金、足りない経験、足りない知識という状況の中で、それでももがき苦しみながら這い上がってきた」

 孫は苦しみ、我慢のすえに這い上がってきた。

「夢を強烈にもって、それが志に昇華するところまで思い続けると、いつの間にか足りないものは勝手に揃ってくる」

 しかし、夢は現時点で実現されていない。どうするか。

 その夢に数値を与え、期限を与える。するとその問題点が明確になる。この具体的な問題点がわかれば、半分解決できたようなものだ。そのとき最初に自分に言う言葉がある。

「それは簡単だ。それは簡単な問題ですと、最初に自分に言うのです。そこから解決策を考えるのです。簡単だと思えば、頭の筋肉がリラックスして解決策がどんどん出始める」

 問題点が出て、これは難しい問題だと一言吐くと、筋肉が硬直していい案が浮かばないと孫は考える。

「知恵がぎこちないものになってしまう」

 最もオーソドックスに本質の解決策を、大枠を考えることが大切だ。孫は言う。

「シンプルに考える」

(文中敬称略)



第48話 武士道

第48話

武士道

 8月30日(火)。ロッテとの首位攻防戦。和田と久保の同級生対決でもある。2回、城島のシングル、宮地の2塁打。まず1点を先制したが、6回にロッテ、サブローのソロで同点に。その裏、ホークスは3点、7回に2点を追加して、ふたたび6対1とリードした。「楽勝のケース」(王監督)。だが、8回にロッテは一挙に6点をあげ、逆転した。

その裏ホークスは、代打大道の今季初安打のタイムリーヒットで同点に。9回、先頭の川崎が3塁打。最後は松中のサヨナラ打。川崎は今季最多の1試合4安打。「(接戦に持ち込まれたのは)ぼくたちにスキがあったからだと思う。もっと気を引き締めていかなければいけない」(松中)。前半は投手戦。後半は乱打戦。私たちは1試合で2つの楽しみを味わうことができてよかったが、疲れた。「この時期、投手はしんどい」(王監督)。2位ロッテとの差は4に。夏バテにご用心。

 8月31日(水)。夏休み最後の試合。ヤフードームに詰め掛けた多くのファンとともに、我々は歴史の目撃者となった。斉藤は開幕15連勝。日本記録タイで勝利投手となったのだ。この日、斉藤はあまり調子がよくなかったが、気迫のこもったピッチングを見せた。「チームが勝つことだけに集中して投げたい」。「万馬券だな」王監督が笑いながら言う伏兵・鳥越とカブレラの活躍で勝利を掴んだ。この日、レギュラーシーズン1位のマジック15が点灯した。

 孫は、これまでの枠を超えたスケールで物を考える。「大きな数字、大きな夢を語ると、男は黙って実行すべきだ、あまり多くを語ると笑われる、軽々しすぎるというように、特に日本的文化、風土の中では批判される場合が多い」。

 壮大な夢を語る孫に対して、いわゆる「孫バッシング」など厳しい反対意見が多かった。これには300年のあいだ、江戸幕府によって培われた武士道の影響が大きいと孫は考えている。

 だが、男は黙って戦うのみでいいのか。「生まれたからには人生を思いっきり生きたい。夢に向かって突き進む」と孫は言うのだ。

 31日の8回表、ロッテの橋本の打球が斉藤の左太ももを直撃、斉藤は転倒したが、1塁に送球、アウト。斉藤は激痛のためしばらく起き上がれないほどだった。冷却スプレーをしてふたたびマウンドに立った。試合後、足を引きずりながらお立ち台にのぼった斉藤は言った。「痛みはありますが、大丈夫です。ここまで来たら投げますよ」。

               (文中敬称略)

第47話 日々新たなり

第47話


日々新たなり






 8月27日(土)。札幌ドームで、ホークスは日本ハムと対戦した。8回まで4対1でリードしていて勝ちパターンだ。「今日の試合は、もう大丈夫」と私は外出した。1時間後に試合結果を確かめて、私は思わず声を上げた。「あれ?」。日本ハム・小笠原の3ランで同点(この日2本目)。延長10回に田中幸のサヨナラ打。田中幸はプロ野球通算5人目の1000打点。吉武が3点のリードを守れず、守護神・馬原も機能しなかった。「まあ、こういう日もある」。

 8月28日(日)。どうしても「負けられない試合」(王監督)だったが、新垣のコントロールが定まらず、5回途中までに自責点8。まさかの連敗。「そう簡単にはうまくいかないということだ。福岡に帰って出直しだ。また、やり直します」(王監督)。指揮官は気持ちを切り換えていた。札幌ドーム、日本ハムに2連敗。誰が予測しただろうか。この週末、オリックス戦に3連勝した2位ロッテとのゲーム差は3に縮まった。だが、百戦錬磨の指揮官はいかなるときも日々、新たな気持ちになる。



 野球もビジネスも同じだろう。孫の圧倒的な精神力の強さは、自己刷新できる点にある。熱い情熱をもち、自己の信じた道を突き進む孫だが、同時にこれまでの事業プランを刷新できる柔軟さも併せもつ。孫は言う。「いままでの自分の作ってきたビジネスモデルを2、3年で変える。自己否定して、どんどん新しくするんです」。

 毎月、孫はアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界中を飛び回っているが、年齢・地位などに関係なく相手の懐にとびこんでいく。偏見のない心は、常に新しいものを受け入れることができる。

 ブロードバンドでは、日本や韓国は世界でもっとも進んでいる。ビジネスチャンスはいくらでもある。「この業界の中でも(いい意味で)へんな人はいっぱいいる。これまでの事績や経歴は関係ない。ほんとうの実力社会がやってきた」と孫は言う。

 ナローバンドの時代はインターネット1、ブロードバンドが普及しつつある現代はインターネット2。スピードの差は1000倍もある。「こんなチャンスにあふれた時代はない」と孫。

 時代はデジタル情報社会に向かって一直線に突き進んでいる。そのために、いちばん必要なことは「柔軟な頭脳だ」(孫)。変わらなければならないのは自分自身だ。日々新たなり。

 インターネットはいまや4大メディアを超えた。あらゆる情報をインターネットで知る時代になった。



 30日(火)から福岡ドームでロッテとの2連戦。どんな新しいホークスが見られるか。

(文中敬称略)


第46話 単純明快

第46話


単純明快







 23日(火)。降雨で1日延びた首位決戦の初戦。ホークス斉藤、ロッテ渡辺俊の両チーム、エース同士の対決。1対1の同点で迎えた7回、ズレータのバックスクリーンに飛び込む本塁打で勝ち越した。斉藤は8回ノーアウト1、2塁のピンチをしのいだ。9回にも強気のピッチングを崩さず投げぬいた。無傷の14連勝。昨年、16連勝を記録した斉藤だが、同じ投手が14連勝以上を2度記録するのはプロ野球史上初の快挙だ。ロッテとの差は5・5に広がった。「(斉藤は)いい意味での緊張感を保っている」(王監督)。



 

 ポータルサイトの雄、1日のアクセス数が11億と圧倒的な強さを誇るヤフーの井上雅博社長。穏やかな語り口調の中にも、並々ならぬ自信をうかがわせる。広告・オークション事業などすべての部門で大幅黒字。なぜ、そんなにも強いのか。「ブロードバンド市場が、それだけ大きくなってきたということでしょうね」(井上社長)。
 米ヤフーとの合弁で1996年にヤフーは設立された。情報検索サービスの提供としてスタートしたが、日本のユーザーの使い勝手のいいように改良を重ねてきた。視聴率を高める(アクセス数を増やす)には、なるべく多くのメニューをそろえるのが効果的だ。「あったらよいと思うサービスを実現し、嫌だと思うトラブルは極力なくしていく」(井上社長)。次々とコンテンツを増やして、総合ポータルサイトに進化してきたのだ。

 いま、ヤフーは「ライフエンジン」をめざしている。その人、その人のライフサイクルにあったもの、それに応えるものを提供していく。「これからも1ケタ、2ケタと売上げを伸ばしていく」(井上社長)。

 インターネットでできることはすべてやる。「すべての分野で一番になる」というのが井上社長の考え方だ。「そのためにやるべきことをやる」。

 1996年の設立時、小さな環だったヤフーは、増大していき、いまや巨大な環になりつつある。

 ヤフーの井上の理念はシンプルでわかりやすい。



 

 王監督と孫正義も大きなひとつの目標に向かって進んでいる。シンプルである。<めざせ世界一、野球もビジネスも>。 

 雨天で試合が延び、斉藤はスライド登板になった。周囲の心配をはねのけるように斉藤の答えはシンプルだった。「投げろと言われたら、それに従うだけ」。試合後の斉藤は言った。「素直にうれしい。また応援してださい」。斉藤の座右の銘は<感謝>。

 球場に応援に駆けつけた孫は興奮ぎみに言った。「最高でした」。
                 (文中敬称略)


第45話 究極の自己満足


第45話


究極の自己満足






 8月20日(土)。杉内と西武・西口、両エースの力投が続いた。的場の強気のリードも冴える。先制タイムリーは松中(100打点)。

8回、バティスタが貴重な追加の2点目をあげた。技と技のぶつかり合いだ。

「見ごたえのある試合だった。(杉内は)最高のピッチングをしてくれたね。コントロールがよかった。今シーズン一番の出来だろう」(王監督)。杉内はハーラー単独トップ。毎回の奪三振14。ホークスは対西武、7勝7敗。

 この日は、第87回全国高校野球選手権大会最終日。駒大苫小牧が優勝。第30回大会の小倉(福岡)以来、57年ぶりの夏連覇を果たした。野球漬けの1日。とても幸せな日だった。



 孫家の家訓に「究極の自己満足」というのがある。孫正義は、「ナンバーワン主義」。なんでもナンバーワンでないと「生きている意味がない」というほどだ。「ビジネスもナンバーワンにならんものは絶対にやらん」と言ってはばからない。それはおそらく父・三憲の負けん気の強い気質を色濃く受け継いだものと思われる。

 そうした「ナンバーワン」を見てきた弟・泰蔵が、「ナンバーワンよりオンリーワン」の存在になりたいと思うようになったのは当然のことだろう。

「すごい兄貴だと尊敬はしていても、自分には自分の生き方がある」(泰蔵)。だが、兄弟に共通している考え方は、「どうすればハッピーになれるか」である。それぞれが自分にとっての「究極の自己満足」を追求する。それこそが自分だけでなく他人の幸せにもつながるかもしれない。

 


 8月21日(日)。対西武。ホークスは2回、ズレータが36号、2ランホームラン。3回には3点を追加した。5回までに6対0と大きくリード。楽勝かに思われた。だが、6回に3点を取られて新垣が降板。7回には1点差にまで詰め寄られていた。「息つくヒマのない試合」展開になった。結果は、馬原が6対5で接戦を制した。ズレータ、バティスタ、カブレラの外国人がお立ち台に登った。貯金は40に。

 これでパ・リーグ3位以内が確定。「貯金は目標を達したが、これからも一試合一試合を気合を入れてね、思い切ってやっていく。2位に5ゲーム以上の差をつけて1位が目標だ」(王監督)。

 どうすればハッピーになれるか。ともに「究極の自己満足」を追求する。事業家孫正義も指揮官王監督も、めざすところはひとつだ。

 23日からはロッテとの直接対決3連戦が始まる。城島も戦列に復帰する。

(文中敬称略)

第44話 勇士


第44話


勇 士






 8月16日(火)。斉藤は開幕から13連勝。松中が初回に先制の39号。

松中は言った。「エースが投げて、負けるわけにはいきませんから」。城島に代わって必死に戦っている的場。松中・斉藤・的場、3人の勇士は優勝の決意を述べた。




 宮内謙(ヤフーBB副社長)は1984年にソフトバンク入社以来、20年以上、孫正義を支えてきた側近だ。事業家としての孫を熟知している。

「孫社長は、いつも事業を立ち上げた瞬間には次に移る。そこが普通の人と違うところ。常人は事業がうまくいきだすとスティック(固執)するんだよね。おれがやったんだ、おれがやったんだで、その事業に埋没する」。

常人の眼には孫は飽きっぽく、短期間で事業に興味をなくしてしまうように思えるときがある。しかし、孫の事業に対する考えは創業以来一貫している。宮内は言う。

「この人には負ける。やっぱり他にはいないと思う。つねに夢をもっていて、負けそうになってもヘコたれない。そういう人なの。ぼくにはとうてい真似ができない」

 絶対不利は絶対有利に通じる。

「孫社長はそれができる。ぎりぎりの瀬戸際のときに、力を発揮できる希有な人物なのです」。

 孫の交渉力、営業、セールス能力のすごさを宮内はつぶさに見てきたのである。20歳で自動翻訳機を売ったときと同じ。あの凄まじいエネルギーはどこから来るのか。宮内は言う。

「孫社長は相手の地位がどうだとか、そういう見方はしない。そこが凄い。企業は技術と営業とオペレーションで成り立っている。そこのところをよくわかっている」

 たとえヤフーBBの技術がすばらしいといっても、売れなければ話にならない。宮内は言う。

「ときには若い32、33歳の社長にも頭を下げることができる人なのです。そして、若い人とも意気投合できる、柔軟な心をもったエネルギーにあふれている。既成概念がまったくない人なんです」

 買収も意気投合しなければ成立しない。

 次々に新しいテクノロジーが生まれてくる。その技術を導入しようとすると既存の勢力から強烈な抵抗にあう。

「人間も企業もそう。血みどろの戦いをしている。ずっと死ぬまで戦うんです。そのプロセスがおもしろい」

 宮内は断言する。

「リーダー孫正義は、世界に冠たる勇士だ」

                 (文中敬称略)




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